ワンストップビジネスセンターで不動産会社は開業できる?宅建業免許の取得条件と注意点を解説

ワンストップビジネスセンターで不動産会社は開業できる?宅建業免許の取得条件と注意点を解説

不動産会社の開業を検討する際、少しでもコストを抑える手段として「バーチャルオフィス」の活用を考える方は多いでしょう。中でも「ワンストップビジネスセンター」は、リーズナブルな価格で法人登記や郵便受取などが可能なことで注目されています。

しかし、不動産会社の開業には宅地建物取引業免許(宅建業免許)の取得が必須であり、そのためには厳格な「事務所要件」を満たす必要があります。

この記事では、ワンストップビジネスセンターの利用で不動産業を開業できるのかどうかを、宅建業免許の視点から詳しく解説します。

ワンストップビジネスセンターとは?

法人登記対応のバーチャルオフィス

ワンストップビジネスセンターは、東京をはじめとする全国各地に拠点を展開しているバーチャルオフィスサービスです。主に以下のような機能が利用可能です。

  • 法人登記用の住所貸与
  • 郵便物の受取・転送
  • 専用電話番号の取得
  • 会議室や打ち合わせスペースの時間貸し
  • オプションで電話対応や秘書代行サービス

低コストで起業できる点が魅力で、個人事業主やスタートアップを中心に広く利用されています。

基本プランでは常駐スペースはない

ワンストップビジネスセンターの標準プランでは、「法人登記に使える住所」は提供されますが、日常的に作業するための専用スペース(個室)は存在しません。会議室は予約制で利用可能ですが、常時使えるわけではなく、受付スペースも共用です。

この点が、不動産業における開業可否を判断する上で重要なポイントになります。

宅建業免許の取得に必要な「事務所要件」

不動産会社を開業するには、まず宅建業免許を取得しなければなりません。その際、最もハードルとなるのが「事務所の設置要件」です。宅建業法では、事務所について以下のような条件を求めています。

宅建業法における「事務所」とは

  • 業務が継続的に行われる拠点であること
  • 宅建士が常勤できる状態であること
  • 他の事業者と明確に区切られた独立空間であること
  • 電話・机・応接スペース・書庫等が備えられていること
  • 標識(宅地建物取引業者票・報酬額表など)が掲示できること
  • 使用権限を証明できる契約書があること

このように、「実体があり、誰が見ても事務所と認識できる場所」でなければならず、単なる住所貸しでは通用しません。

ワンストップビジネスセンターで宅建業免許は取得できるか?

基本プランでは「不可」

結論から言えば、ワンストップビジネスセンターのバーチャルオフィス(住所利用のみ)では、宅建業免許の取得はできませんその理由は以下の通りです。

  • 宅建士が常勤できる常設スペースが存在しない
  • 専用の机や書庫などが常時設置されていない
  • 空間が他利用者と共用で独立性がない
  • 標識の掲示ができない、もしくは制限される
  • 執務実態がないと判断されるリスクが高い

つまり、表面的には「登記はできる」ものの、免許取得のための物理的・法的な要件を満たせないのが実情です。

例外:一部拠点の個室・専用スペースなら可能性あり

ただし、ワンストップビジネスセンターの中には、「専用個室付きのプラン」や「常時使用可能な専有スペース」がある拠点も存在します。こうした拠点を利用し、下記の条件を満たすことで、宅建業免許が取得できる可能性が出てきます。

  • 完全に施錠できる個室を利用
  • 使用権限を明記した賃貸借契約書を交付してもらう
  • 電話・事務机・書庫・応接設備を揃える
  • 標識(標準様式)を掲示できること
  • 宅建士が常勤で出社できる状態を確保

このような「実体のある事務所」として運用できる場合に限り、審査が通る可能性があります。

審査の厳しさは自治体ごとに異なる

なお、事務所要件の解釈や審査の厳しさは、都道府県によって異なることも注意点です。例えば、東京都は比較的柔軟に判断してくれる傾向がありますが、大阪府や愛知県などではかなり厳しく判断されるケースもあります。

したがって、開業を検討している拠点の所在地に応じて、事前に必ず管轄の免許窓口に相談することが不可欠です。

開業前に確認すべきポイントと注意点

1. 契約書に「専用使用権限」があるか?

バーチャルオフィス契約書には、単なる住所使用の権利しか記載されていないことがほとんどです。宅建業免許の取得には、「専用の事務所として継続使用できる」ことを証明する必要があり、使用目的や利用形態が契約書に明記されていないと認められません。

2. 標識・報酬額表が掲示できるか?

宅建業法では、標識や報酬額表を事務所に掲示することが義務付けられています。看板設置が不可能、または掲示が認められていない施設では、免許が交付されない恐れがあります。

3. 宅建士の常勤体制を整えられるか?

バーチャルオフィスでは、物理的に「常勤」が成立しないと見なされやすく、名義上だけ宅建士を置いたとしても、実態がなければ違反となります。個室型オフィスで常駐できる環境が必須です。

4. 内装や設備が事務所としての体裁を持っているか?

実際の審査では、机・書庫・電話・PCなどの執務環境の写真提出が求められることがあります。見た目が簡易すぎたり、生活感が強い場合には、「事務所としての実態がない」と判断されるリスクがあります。

まとめ:原則不可だが、専用個室なら審査次第で開業も可能

ワンストップビジネスセンターは、コストを抑えた起業手段として非常に便利なサービスですが、宅建業免許取得に必要な「事務所要件」を満たすには基本的に不十分です。

ただし、一部の拠点で用意されている専用個室や常駐型オフィスプランを契約し、設備や書類が整っていれば、開業が可能になるケースもあります。成功の鍵は、以下の3点です。

  • 拠点選びを慎重に行う
  • 契約前に宅建業免許の担当窓口へ相談する
  • 使用権限・設備・写真など、要件を満たす準備を怠らない

不動産業の開業は、スタート時点での事務所選びがその後の運営を大きく左右します。見かけのコストだけで判断せず、実態に即した「開業可能な事務所」を整えることが最も重要な投資と言えるでしょう。

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