不動産開業時に加入する保証協会は全宅と全日どちらを選ぶべき?違い・費用・サポートを徹底比較

不動産会社を開業する際には、「宅地建物取引業免許(宅建業免許)」の取得が不可欠です。
そして、この免許を取得するためには、「営業保証金制度」もしくは「保証協会制度」のいずれかを選ばなければなりません。
多くの開業者が選ぶのは、初期費用を抑えられる保証協会への加入ですが、日本には2つの主要な団体があります。
どちらを選ぶべきか迷っている方に向けて、本記事では両協会の違い、費用、サポート体制などを比較しながら、選び方のポイントを詳しく解説します。
不動産保証協会とは?なぜ加入するのか
営業保証金制度との違い
宅建業法では、営業を始めるために主たる事務所に対して1,000万円の営業保証金を供託する必要があります。これは、万が一トラブルが起きたときに消費者保護のために使われる制度です。
ただし、1,000万円という金額は、独立開業したばかりの不動産会社にとっては大きな負担となります。
その代替制度として用意されているのが「保証協会制度」です。保証協会に加入することで、営業保証金を供託せずに開業が可能となり、代わりに弁済業務保証金分担金(60万円)を納付することで済みます。
保証協会加入の基本的なメリット
全国宅地建物取引業協会連合会(全宅)の特徴
業界最大規模の会員数
全宅は全国におよそ10万社の会員を持つ日本最大級の不動産団体です。
都道府県ごとに宅建協会があり、支部単位で組織が運営されているため、地域密着型のサポートが受けられます。
「ハトマーク」のブランド力
不動産広告や看板でよく見かける「ハトマーク」は全宅のシンボルです。
消費者からの認知度も高く、安心感や信頼性を演出できるツールとして集客にも貢献します。
地方の開業者にも安心の支部体制
支部が各地域に密着しているため、地方都市や郊外での開業者にも心強いサポートがあります。
相談・研修・法務対応までワンストップでサポートしてくれる体制が整っているのが特徴です。
全日本不動産協会(全日)の特徴
歴史ある不動産団体
全日は1947年設立という長い歴史を持つ協会で、現在の会員数は約3万5千社程度です。全国に支部を持ちつつも、ややコンパクトでフラットな運営が特徴です。
ウサギマークでの差別化
全日では「ウサギマーク」をシンボルに掲げており、ハトマークとの差別化を図っています。広告に使用できるため、独自性を出したい開業者にとってはプラスに働きます。
IT支援やオンライン化に注力
近年、全日はオンライン研修や電子契約対応などIT化への対応を強化しています。都市部でフリーランス的な働き方をしたい開業者には好相性です。
費用比較:全宅と全日でどれくらい違う?
以下は、東京都で開業する場合を想定した一例です(2025年時点の平均的な数値)。
項目 | 全宅(東京都宅建協会) | 全日(東京都本部) |
---|---|---|
入会金 | 約20万円 | 約15万円 |
年会費 | 約6万円(初年度月割) | 約6万円(初年度月割) |
弁済業務保証金分担金 | 60万円(法定額) | 60万円(法定額) |
合計初期費用 | 約86万円前後 | 約81万円前後 |
地域によって差がありますが、全体的には全日の方がやや安くスタートできる傾向があります。
全宅と全日サポート体制の比較
教育・研修制度
- 全宅:支部単位で対面研修が頻繁に開催されており、特に新規開業者向けの導入講座が充実しています。
- 全日:オンライン研修の整備が進んでおり、時間や場所に縛られずに学習できます。
トラブル対応・相談窓口
- 全宅:地元支部に顧問弁護士がついている場合も多く、直接相談できる安心感があります。
- 全日:支部の窓口対応に加え、本部による一括対応でスムーズに処理されることもあります。
書式・システムの支援
- 全宅:ハトマークサイトや物件管理ツール、書式テンプレートが充実。
- 全日:レインズを中心とした基本ツールに加え、独自の会員ポータルなどを用意。
全宅と全日どちらの協会を選ぶべきか?判断ポイント
判断基準 | 全宅が向いている | 全日が向いている |
---|---|---|
地域密着で活動したい | ○ | △ |
信頼性の高いブランドを活用したい | ○ | △ |
初期費用を抑えたい | △ | ○ |
オンライン中心で活動したい | △ | ○ |
手厚いサポートを重視したい | ○ | △ |
都市部で個人開業したい | △ | ○ |
自分の事業スタイル、活動エリア、IT活用度、資金状況などを踏まえて選ぶのがベストです。
まとめ:どちらに加入しても開業は可能、選定のカギは“自分の戦略”
全宅と全日はどちらも、国土交通大臣の認可を受けた正規の保証協会です。
どちらを選んでも宅建業免許の取得・開業は問題なく可能です。
違いが出るのは、「費用感」「サポート内容」「ネットワークの強さ」「システム・ブランド戦略」の部分です。最終的には、ご自身の不動産事業の方針や働き方に合った方を選ぶことが、開業後の安定経営につながります。
迷った場合は、両協会の支部に説明会参加や個別相談を申し込むのも有効です。実際の対応を見てから判断することで、より納得感のある選択ができるでしょう。