不動産会社の開業後に交付される「宅建免許証」とは?標識との違い・掲示義務も解説

不動産会社の開業後に交付される「宅建免許証」とは?標識との違い・掲示義務も解説

不動産会社を開業し、宅地建物取引業免許を取得すると、「宅建免許証」が交付されます。

これは営業活動を行うために必要不可欠なものであり、行政から正式に「宅建業者として認められた証」となります。

一方で、不動産業界では「標識(宅建業者票)」という掲示物も存在します。これらは混同されがちですが、役割や扱い方には明確な違いがあります。

この記事では、「宅建免許証」とは何か、その取得後の扱いや「標識(業者票)」との違い、掲示義務などについて詳しく解説します。

宅建免許証とは?どんな書類なのか

宅建免許証とは、都道府県知事または国土交通大臣から交付される不動産会社としての営業許可証です。

正式には「宅地建物取引業者免許通知書」と呼ばれるもので、以下のような情報が記載されています。

宅建免許証に記載される内容

  • 免許番号(例:東京都知事(1)第123456号)
  • 商号または法人名
  • 代表者氏名
  • 主たる事務所の所在地
  • 免許有効期間(5年間)
  • 免許権者(東京都知事、国土交通大臣など)

この書類は、営業開始前に取得すべき最も重要な行政文書のひとつであり、不動産取引に関わる各種申請や契約時に必要となることもあります。

宅建免許証の扱い

  • 原本は大切に保管(通常はファイルや金庫などに保管)
  • 更新時に必要なため、紛失しないよう注意
  • コピーを関係先に提出するケースもあり(金融機関、管理会社など)

なお、この免許証そのものを事務所内に「掲示」する義務はありません。

宅建業者票(標識)とは?免許証とは別物

宅建免許証と混同されやすいのが、「宅地建物取引業者票」、通称「標識(ひょうしき)」です。

これは、宅建業法第50条により事務所の見やすい場所に掲示することが義務付けられているプレート状の標示物です。

宅建業者票に記載される内容

  • 商号(会社名)
  • 代表者氏名
  • 主たる事務所の所在地
  • 免許証番号
  • 免許年月日
  • 専任の宅地建物取引士の氏名
  • 所属団体
  • 業務の種別(売買・賃貸・媒介・代理など)

この標識は営業所や店舗の“顔”ともなる掲示物で、顧客や取引先に対し、「正規に営業している不動産業者」であることを示す役割を果たします。

標識は掲示が義務

  • 主たる事務所・従たる事務所に1枚ずつ掲示
  • 外部から見える場所、または来客が容易に確認できる位置に設置
  • 掲示していない場合は、行政指導・改善命令の対象となる可能性あり
荒川 竜介

標識の作成は、免許証番号が発行された後に行い、看板業者やネットサービスを利用して注文するのが一般的です。

宅建免許証と標識の違いまとめ

比較項目宅建免許証宅建業者票(標識)
交付元都道府県知事または国土交通大臣自社で作成
書式行政から交付される紙の文書看板・プレート形式
記載内容登録番号・商号・代表者名など登録番号・商号・専任宅建士氏名など
掲示義務なし(保管義務あり)あり(事務所に掲示)
主な役割行政上の免許証明書顧客・取引先への営業資格の表示

このように、免許証と標識は性質も役割も異なるものです。

宅建免許証の更新と標識の変更

宅建業の免許は5年ごとの更新制です。

更新時には再度審査があり、引き続き事務所要件や人員要件(宅建士の専任性など)を満たしている必要があります。

免許番号は更新のたびに(1)→(2)→(3)と回数が増えていくため、それに応じて標識の内容も変更しなければなりません。更新後の標識の差し替えも忘れず行いましょう。

標識の差し替えタイミング

  • 免許更新後すぐ(免許証番号の変更あり)
  • 商号(会社名)を変更したとき
  • 代表者が変更になったとき
  • 専任の宅建士が変更されたとき

これらの変更を怠ると、宅建業法違反となる恐れがあります。

標識と併せて必要な掲示物とは?

不動産事務所には、標識のほかにも宅建業法で掲示が義務づけられている資料があります。

報酬額表の掲示

  • 不動産仲介手数料などの上限額を明示する表
  • 顧客とのトラブル防止のため、事務所内に見やすく掲示
  • 自社で作成可能(テンプレートも多数あり)

宅地建物取引士証の携帯義務

  • 宅建士は、重要事項説明を行う際に「宅地建物取引士証」を提示する義務あり
  • 事務所内で説明する場合も、本人の顔写真付き証明書を顧客に提示することが法令で定められています

まとめ:免許証と標識は両方とも必要不可欠な存在

不動産会社として開業する際は、宅建免許証(免許通知書)と標識(業者票)を正しく理解し、それぞれの役割に沿って運用することが重要です。

  • 宅建免許証は「法的な許可証」として大切に保管する
  • 標識は事務所に掲示し、顧客に「安心感」と「営業の正当性」を示す
  • 更新や変更があった際は、速やかに内容を修正・掲示し直す

法令を遵守しながらも、信頼される不動産会社として営業するために、これらの基本をしっかり整えておきましょう。

荒川 竜介

初めての開業であっても、名刺やホームページと同じように、「免許証と標識」も不動産業の“顔”として扱う意識が大切です。

あなたへのおすすめ