保証協会と営業保証金の違い|初心者でもわかる加入手続きガイド

宅建業免許を取得したあと、すぐに不動産会社を営業できるわけではありません。営業を開始するには、「営業保証金の供託」または「保証協会への加入」のいずれかを選び、所定の手続きを完了させる必要があります。
この記事では、「営業保証金」と「保証協会」の違いをわかりやすく比較し、それぞれのメリット・デメリット、さらに初心者向けに加入手続きの流れを解説します。
宅建業の営業開始に必要な手続きとは?
宅建業法では、宅建業免許を取得した事業者が実際に営業を始めるには、次のいずれかの方法で消費者保護のための「保証制度」に加入しなければなりません。
どちらも目的は同じで、「不動産取引で損害を受けた消費者に対して補償を行うための制度」です。ただし、制度の仕組みや必要資金、手続き方法には大きな違いがあります。
営業保証金とは?
営業保証金とは、事業者が自ら一定額の現金を法務局に供託する制度です。宅建業者が万が一トラブルを起こして損害賠償義務を負った場合、そのお金から被害者に弁済されます。
営業保証金の供託額
営業所の数 | 供託額 |
---|---|
本店 | 1,000万円 |
支店ごと | 500万円(追加) |
つまり、本店のみの営業でも1,000万円という大きな資金が必要になります。中小企業や個人開業の場合、現実的に厳しい選択肢となります。
メリット・デメリット
供託金は自社の資産として扱える(預けているだけ)
- 初期費用が非常に高額
- 法務局での供託手続きが煩雑
- 営業所が増えるごとに追加供託が必要
保証協会とは?
保証協会は、国土交通大臣が指定する公益法人で、宅建業者が営業保証金を供託する代わりに加入できる制度です。主に以下の2団体があります。
- 全日本不動産協会(全日)
- 全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)
加入することで、営業保証金の供託義務が免除され、代わりに保証協会が弁済業務を担う仕組みとなっています。
保証協会加入時の費用
費用項目 | 金額の目安 |
---|---|
弁済業務保証金分担金 | 60万円(非返金) |
入会金・年会費 | 約20〜40万円 |
登録費用・研修費 | 1万〜数万円程度 |
合計で100万円前後が相場です。営業保証金(1,000万円)と比べると、資金負担が大幅に軽減されます。
メリット・デメリット
- 初期コストを大幅に抑えられる
- 会員向けサポートや研修が受けられる
- 不動産流通ネットワーク(レインズ)への登録もスムーズ
- 弁済業務保証金分担金は戻ってこない
- 年会費や事務手続きが継続的に発生
- 保証協会ごとにルールやサービスに差がある
営業保証金と保証協会の違いまとめ
項目 | 営業保証金 | 保証協会加入 |
---|---|---|
初期費用 | 1,000万円(本店のみ) | 約100万円 |
返還の可能性 | 全額返還可能 | 分担金60万円は返金なし |
手続き先 | 法務局 | 保証協会(全日 or 全宅連) |
手続きの手間 | 高い | 協会がサポート |
支店追加時の費用 | 1支店ごとに500万円 | 支店ごとに30万円程度(分担金) |
メリット | 全額資産に計上可能 | 費用負担が軽くサポートも充実 |
デメリット | 負担が非常に大きい | 年会費や加入条件に差がある |
不動産会社のほとんどは保証協会に加入しています。営業保証金を供託する事業者は全体の1%以下とも言われています。
初心者向け:保証協会加入の手続きガイド
宅建業免許を取得する
保証協会への加入は、宅建業免許を取得してから行います。免許申請中はまだ加入できません。
加入する協会を選ぶ
主に以下の2つから選びます。
- 【全宅連】全国宅地建物取引業協会連合会(多くの都道府県でシェアが高い)
- 【全日】全日本不動産協会(特に都市部での会員数が多い)
それぞれサービス内容や年会費が異なるため、地域の支部に問い合わせて比較するのがおすすめです。
入会申込と必要書類の提出
主な提出書類
- 入会申込書
- 登記事項証明書(法人の場合)
- 宅建業免許通知書の写し
- 代表者の身分証明書・略歴書
- 事務所の賃貸契約書・写真
分担金・入会金などの納付
- 弁済業務保証金分担金:60万円
- 入会金・年会費:都道府県や協会によって異なる
- 支払い完了後、協会にて受領証などを発行
協会が供託手続きを代行
加入が完了すると、保証協会が国土交通大臣へ営業開始通知を提出します。この時点で、ようやく宅建業者は営業をスタートできるようになります。
宅建業者票や報酬額表を掲示して営業開始
営業所内に以下の掲示物を設置して、正式に営業を開始できます。
- 宅建業者票(免許番号・商号などを記載)
- 報酬額表(手数料の上限一覧)
まとめ:営業保証金制度は保証協会で代替するのが主流
宅建業の営業を開始するには、営業保証金を供託するか、保証協会に加入する必要があります。圧倒的多数の不動産会社は、初期負担の軽い保証協会を選択しています。
初めての開業で資金に余裕がない場合は、保証協会を活用することで現実的なスタートが切れます。どちらを選ぶにしても、営業開始までの流れとタイミングをしっかり把握しておくことが成功のカギです。計画的に準備を進め、スムーズに不動産業をスタートさせましょう。