別会社で社長・役員をしているけど、専任宅建士になれる?

別会社で社長・役員をしているけど、専任宅建士になれる?

不動産会社を新たに立ち上げようとする際、「専任の宅地建物取引士(宅建士)をどう確保するか」は大きな課題のひとつです。

特に、自分自身が別会社で社長や役員を務めている場合、「専任宅建士として登録できるのか?」という疑問を抱く方も多いのではないでしょうか。

この記事では、宅建業法における専任性の考え方や、他社の役員兼務と専任登録の可否、審査で求められるポイントについて詳しく解説します。

専任宅建士に求められる「専任性」とは?

宅建業法では、不動産会社が宅建業免許を取得・維持するために、事務所ごとに「専任の宅地建物取引士」を一定数設置することが義務付けられています。

ここでいう「専任」とは、以下のような条件を満たす者を指します。

専任性の主な要件

  • 常勤の従業者であること
  • 他の会社にフルタイム勤務していないこと
  • 宅建業以外の業務に主たる時間を割いていないこと

つまり、宅建士資格を持っているだけでは足りず、その会社での勤務実態があることが前提となります。

他社で社長・役員をしていると専任宅建士になれない?

結論から言うと、状況によっては「専任宅建士」として登録可能です。

ただし、「実質的に常勤勤務ができるかどうか」が審査のポイントになります。

実質的に勤務していない役員なら認められることもある

たとえば、次のようなケースでは専任宅建士として認められる可能性があります。

  • 他社では非常勤取締役として名前だけを連ねている
  • 他社での業務は週1回程度の短時間に限られている
  • 実態としては主たる勤務先が宅建業者である

このように、他社に籍があっても「宅建業者に常勤している」と認められれば問題ありません。

他社で日常的に経営業務に関わっている場合はNG

一方で、以下のような場合は専任性が否定される可能性が高くなります

  • 他社でも実質的に常勤勤務している
  • 毎日フルタイムで他社の業務を遂行している
  • 他社でも代表取締役として日々の意思決定に深く関与している

このような場合は「専任性が確保されていない」と判断され、不動産会社の免許申請に支障が出ることになります。

荒川 竜介

とにかく「専任性」が非常に重要なポイントとなります。

専任性を証明するために必要な実務資料

専任性を主張する場合は、勤務実態を客観的に証明できる資料が求められるケースが多くあります。以下は代表的な資料例です。

勤務実態の証明例

資料内容
タイムカード実際の勤務時間の記録
給与支払明細宅建業者から給与が支払われている証拠
雇用契約書雇用形態・勤務時間・職務内容が記載されている
就業規則常勤者としての扱いであることの裏付け
他社との業務契約書非常勤・業務委託であることの確認ができる書類

行政庁によっては、申請時にこれらの提出を求められる場合もあります。

審査は各都道府県で異なる場合がある

宅建業の免許は、原則として本店所在地を管轄する都道府県知事(または国土交通大臣)が審査を行います。

専任性の判断基準は、各都道府県で若干異なる運用がされていることもあるため、事前に免許窓口に相談するのがベストです。

特に、開業時に社長自身が専任宅建士になる予定で、かつ他社の経営にも関与している場合は、個別事情を詳しく伝えたうえで判断を仰ぐことが重要です。

実際に専任宅建士として認められたケース

以下のようなケースでは、専任宅建士として認められる可能性が高くなります。

  • 他社では法人の登記に名前があるが、日常業務はほぼ不関与
  • 宅建業者では実際に常勤で勤務しており、給与も支払われている
  • 他社とは業務委託契約で、稼働時間は月数時間程度に限られる

これらの内容を書面で明示・証明することができれば、審査上有利に働きます。

登録をスムーズに進めるためのポイント

専任性の審査でつまずかないためには、次の点をあらかじめ準備しておくと安心です。

1. 勤務先との契約形態を整理する

宅建業者とは「雇用契約」や「役員就任契約」を結び、就業時間・業務内容を明確にしておきましょう。

2. 他社との兼務状況を明示できるようにする

副業先がある場合でも、「非常勤」であることを契約書や稼働記録などで説明できるように整備しておくとよいでしょう。

3. 不明点は必ず事前に相談する

最終的な判断は各自治体に委ねられるため、不安がある場合は申請前に宅建業免許の窓口に相談するのが確実です。

まとめ:社長や役員でも専任宅建士になれる可能性はある

他社で社長・役員を務めている場合でも、以下の条件を満たせば専任宅建士として登録することは可能です。

  • 宅建業者に主たる勤務先があること
  • 勤務実態を客観的に証明できること
  • 他社では非常勤や非実務的な関与であること

一方で、複数の会社でフルタイムに近い業務をこなしている場合は、専任性が認められない可能性もあるため、早めの準備と相談が肝心です。

不動産業の開業を検討している方は、自ら専任宅建士となる選択肢を含め、勤務状況と役職の整理を進めていきましょう。

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