不動産会社の開業にFAXは必要?宅建業免許における要件と設置の可否を解説

不動産会社の開業にFAXは必要?宅建業免許における要件と設置の可否を解説

不動産業界での独立開業を検討する中で、「FAXって今どき必要?」「宅建業免許にFAXは関係ある?」といった疑問を持つ方は少なくありません。

特にペーパーレス化やデジタルツールの普及が進む昨今では、FAXを省いてコストを抑えたいと考える開業者も多いでしょう。

しかし、現実の不動産業務では今なおFAXが活用されている場面があり、宅建業免許の審査時にもFAXの有無が審査項目に含まれている自治体も存在します

この記事では、不動産会社の開業におけるFAXの必要性、免許取得時の取り扱い、FAXの代替手段、実務面での役割まで詳しく解説します。

宅建業免許とFAX設備の関係

宅建業法上、FAXの設置は義務付けられていません。

しかし、各都道府県が行う免許審査では「事務所として業務を遂行できる設備が整っているか」が確認され、その一環としてFAX機器の有無がチェックされるケースがあります

なぜFAXが審査項目に含まれるのか?

FAXは以下のような点で、事務所の業務実態を裏付ける設備として捉えられることがあります。

  • 書類の送受信体制が整っているかの確認
  • 他の不動産業者との取引に必要な通信手段があるか
  • 通常の業務運営に必要な機器として整備されているか

そのため、FAXの設置を求める自治体と、不要とする自治体が存在するのが現状です。

不動産会社営業時にFAXが必要とされる主な場面

不動産実務では、現在もFAXが使用されるシーンがいくつか存在します。

1. 物件情報のやり取り

レインズに未掲載の物件や、古くから取引のある業者からの物件資料などは、FAXでやり取りされることが少なくありません。とくに地方の業者や高齢のオーナーとのやりとりでは、FAXが依然として主流という場合もあります。

2. 契約書・重要事項説明書の仮送付

正式な契約書や重要事項説明書を郵送する前に、内容確認用としてFAXで送付するという運用も多く見られます。メールではなくFAXで対応している管理会社も少なくありません。

3. 行政への提出書類・返信用書式

一部の役所や保証会社とのやりとりで、FAX送信が必要なケースも残っており、すべてをデジタルで完結させるのが難しい場面も依然存在します

FAXを設置しないと宅建業免許が取れないのか?

原則:FAXの設置は“推奨”だが“必須ではない”

宅建業免許申請において、FAXの設置が明確に必須とされている法的根拠はありません

ただし、審査官が事務所を確認した際に、設備不十分と判断されるリスクを避けるために、最低限の通信手段として設置を推奨されることがあります

審査に影響しやすいケース

以下のような条件が重なる場合は、FAXが設置されていないことで審査時に指摘される可能性があります。

  • 固定電話がない
  • 事務所が小規模(マンションの1室など)
  • 実体のあるオフィスかどうかを慎重に見られている
  • 書類送信手段が携帯メールや個人LINEのみ

このような状況では、FAXを設置しておくことで、業務実態を証明するひとつの材料となるため、安全策として検討される価値があります。

不動産開業するにあたってFAXの代替手段は認められるのか?

1. インターネットFAX

インターネットFAX(eFaxやMOVFAXなど)は、FAX機器を使わずにPCやスマホでFAXの送受信ができるクラウドサービスです。見た目上は通常のFAXと変わらないため、免許審査でも問題なく認められることが多いです。

ただし、審査時には下記のような点に注意が必要です。

  • 登録したFAX番号が書面に記載されているか
  • 電話番号と同様に法人名義で契約しているか
  • インターフェース画面の印刷などで証明できる状態にあるか

費用も月額1,000円前後から始められるため、コストを抑えたい方にとっては現実的な代替手段です。

2. メール送信+PDF

「FAXは一切使わず、すべてメールとPDFで済ませたい」という声もあります。実際、社内業務ではこれで十分に完結する場合もあります。

しかし、他社がFAXでのやりとりを希望する場合、応じられないと業務に支障が出ることもあるため、完全にFAXを排除する方針はおすすめできません。

不動産開業後にFAXがないと困ることはある?

宅建業免許を取得したあとも、以下のような場面でFAXがないと困るケースがあります。

  • 管理会社への内見依頼がFAX限定
  • 他業者との物件資料の共有
  • オーナーがFAXしか使えない高齢者の場合

こうした理由から、FAXの完全撤廃は現実的ではないといえるのが現状です。特に営業エリアに高齢オーナーが多い場合や、古い慣習が根強い地域では、FAXの設置は実務上必須と考えてよいでしょう。

まとめ:宅建業免許のためにもFAXは用意しておくのが無難

不動産会社の開業にあたって、FAXの設置は法的に必須ではありませんが、免許審査や開業後の実務を考慮すると、導入しておくのが安全かつ現実的です

どうしてもFAX機器を置きたくない場合は、インターネットFAXなどのクラウド型サービスを利用することで、コストを抑えつつ要件を満たすことが可能です。

以下のような方には、FAX導入を強くおすすめします。

  • 初めての宅建業免許申請で審査が不安な方
  • 地方や年配の顧客が多いエリアで開業する方
  • 他業者とのやりとりがFAX中心である地域に進出する方

一方、デジタル環境が整ったエリアや取引先であれば、FAXの重要性は徐々に低下しています。自社の営業スタイルや顧客層をよく分析し、FAXの設置有無を判断することが、効率的な不動産開業への第一歩となるでしょう。

あなたへのおすすめ