宅建免許証はどこに掲示すればいい?事務所内での正しい掲示場所と違反リスクを解説

不動産会社を開業すると、宅地建物取引業の免許を取得することになります。
そして免許取得後には「宅建免許証」や「宅建業者票(標識)」など、掲示が必要な書類やプレートが存在します。
なかでも、「宅建免許証はどこに掲示すればいいの?」「事務所内に貼っておかないと違反になるの?」と疑問を持つ方も多いでしょう。
この記事では、「宅建免許証」と「宅建業者票(標識)」の違いを整理しながら、事務所内での正しい掲示場所、掲示義務があるものとないもの、そして違反した場合のリスクまでを詳しく解説します。
宅建免許証と宅建業者票の違いを正しく理解しよう
まず前提として、よく混同される「宅建免許証」と「宅建業者票(標識)」は、まったく異なるものです。
宅建免許証とは?
正式名称は「宅地建物取引業免許通知書」であり、都道府県知事や国土交通大臣が発行する公文書です。不動産業を営むための許可証であり、免許番号や有効期限などが記載されています。
つまり、宅建免許証は「社内文書」的な扱いで、顧客向けに提示するものではありません。
宅建業者票(標識)とは?
宅地建物取引業法第50条により、営業用の事務所や店舗に掲示が義務付けられているプレートです。
見積書や契約書にも記載される「免許番号」や「代表者氏名」「専任宅建士の氏名」などが掲載されており、不動産会社の営業の“顔”とも言える存在です。
- 事務所や営業所に常時掲示が義務
- 不特定多数が確認できる位置に設置
- 掲示していないと指導・行政処分の対象となる可能性あり
したがって、掲示すべきは「宅建免許証」ではなく「標識(宅建業者票)」であることをまず押さえておきましょう。
宅建免許証は掲示義務なし。ただし適切に保管を
宅建免許証そのものには掲示義務はありません。
そのため、「事務所内の壁に貼らなければいけない」「額縁に入れて掲示しないと違法になる」といったルールは存在しません。
では宅建免許証はどう扱えばよいのか?
したがって、宅建免許証は「誰でも見える場所」に掲示するよりも、「責任者がしっかり保管し、必要時に提示できる状態」にしておくことが大切です。
宅建業者票(標識)の正しい掲示場所と注意点
実際に掲示義務があるのは「宅建業者票(標識)」です。
不動産会社を開業したら、以下のポイントを守って、事務所や店舗に正しく設置しましょう。
どこに掲示すればよい?
- 事務所の見やすい場所(受付・接客スペースなど)
- 来訪者や顧客が自然に目にする位置
- 壁面・カウンター・入口横などに固定
「どこかにある」ではなく、「誰が見てもすぐわかる位置」に掲示する必要があります。裏手の事務室や棚の中では違反となる可能性があります。
対象となる事務所の範囲
- 主たる事務所(本社)
- 従たる事務所(支店・営業所)
- 契約締結の可能性がある常設のモデルルームや販売センターなど
掲示の仕様は?
- A3以上のプレート形式が推奨(サイズ指定は法令上なし)
- 木製、金属製、アクリル板などで作成されることが多い
- デザインは自由だが、記載内容は法定項目を正確に
特に「免許番号」「代表者氏名」「専任の宅建士氏名」「免許有効期限」などは正確に表示する必要があります。
宅建業者票の掲示を怠った場合のリスク
宅建業者票の掲示を怠ると、以下のようなペナルティが発生する可能性があります。
行政指導・改善命令の対象
所轄の都道府県からの立入検査や実地調査の際、掲示されていないことが判明すると、指導・改善命令の対象となる可能性があります。
特に「宅建士の専任性」「事務所要件」など、宅建業法に関わる要素が疑われる場合、より厳しいチェックが行われることがあります。
信用リスク
来店者や取引先にとって、宅建業者票が掲示されていない不動産会社は「きちんと免許を取っているのか?」「本当に営業している会社なのか?」という疑念を抱かせる要因になります。
信頼を築くためにも、標識の掲示は基本的なマナーとも言えます。
宅建士証の提示義務との混同にも注意
宅建免許証や業者票とは別に、「宅地建物取引士証(顔写真付き)」についても誤解が多い項目です。
こちらは「重要事項説明」を行う際に、顧客に対して宅建士証を提示する義務があるというものであり、常時掲示する必要はありません。ただし、名刺などに宅建士であることを記載する際には、誤認を招かないよう注意が必要です。
まとめ:掲示が必要なのは“標識”、免許証は保管でOK
不動産会社を開業した際に気をつけるべきポイントは以下の通りです。
- 宅建免許証は掲示義務なし → 厳重に保管
- 宅建業者票(標識)は掲示義務あり → 顧客から見やすい場所に設置
- 掲示していないと宅建業法違反のリスク
- 標識の記載内容は免許更新や変更の都度、正確に反映させる必要あり
名刺やWebサイトと同様、事務所に掲示する内容も「信頼される不動産会社づくり」の一環です。形式的な対応で済ませず、顧客に安心してもらえる空間を意識して、開業準備を整えていきましょう。