宅建業免許に必要な事務所要件とは?自宅・賃貸オフィスの可否

不動産業を開業するには宅建業免許が必要ですが、その取得には「適切な事務所を確保していること」が前提条件となります。しかし「自宅でもOK?」「賃貸オフィスで大丈夫?」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
この記事では、宅建業免許を取得するために求められる事務所の条件(要件)をわかりやすく解説し、自宅や賃貸物件での開業が可能かどうかについても詳しく紹介します。
宅建業免許に必要な「事務所」とは?
宅地建物取引業法における「事務所」とは、宅建業における継続的な業務が行われる拠点を指します。
つまり単なる所在地の記載だけでなく、
以下のような要件をすべて満たす必要があります。
宅建業の事務所に求められる主な要件
1. 独立性・専有性があること
宅建業の事務所は、ほかのスペースと明確に区切られた空間でなければなりません。
壁や間仕切りで他室と区分されており、専有部分として管理されていることが必要です。
たとえば、次のようなケースは要注意です。
- シェアオフィスで個室ではない(ブース型など)
- 他社とスペースを共有している
- 自宅の一室だが独立した出入口がない
2. 宅建業者票・報酬額表などを掲示できること
宅建業の営業所には、次の掲示物の設置が義務づけられています。
- 宅建業者票(免許番号や商号などを記載)
- 報酬額表(仲介手数料の上限など)
これらを常に掲示できるスペースが必要です。
リビングの隅や間借りスペースなどで常設できない場所は要件を満たしません。
3. 専任の宅建士が常駐できること
各事務所には、専任の宅地建物取引士が常勤で勤務している必要があります。兼業で他社に勤めていたり、他の事業所と兼任している場合は不可です。
また、事務所に常駐できない勤務形態(リモート勤務や非常勤など)も要件を満たしません。
4. 電話・FAXなどの通信設備が整っていること
事務所には、顧客対応ができる最低限の通信設備(電話番号・FAX・メールアドレスなど)が備わっている必要があります。携帯電話のみでの対応や、ネット回線がない場合などは要注意です。
自宅は宅建業の事務所として使える?
結論から言えば、自宅を事務所として使用することは可能ですが、厳しい条件があります。
自宅兼事務所で認められるための条件
- 他の生活スペースと明確に区切られている(壁・扉などで区分)
- 事務所用の入口がある、または玄関からすぐに事務所にアクセスできる
- 宅建業に必要な掲示物が常時設置可能
- 電話・FAX・パソコンなどの業務用設備が整っている
- 専任の宅建士が常駐できる
これらをすべて満たしていれば、自宅でも宅建業免許の取得は可能です。
自宅利用でNGになりやすいケース
- 家族の生活スペースと区切りがない
- リビングの一角に机を置いただけ
- 郵便受けや表札に屋号が表示されていない
- 賃貸契約で「事務所利用不可」となっている
特に、賃貸物件での自宅利用には「契約書上の使用用途制限」が大きなハードルになります。事前に管理会社やオーナーに「宅建業免許の申請で事務所として使いたい」と伝え、許可を得る必要があります。
賃貸オフィス・シェアオフィスは使える?
賃貸オフィスは基本的に利用可能
一般的な賃貸オフィス(いわゆるテナント物件)は、事務所用として契約されていれば問題ありません。重要なのは、以下の要件を満たすことです。
- 独立した鍵付きの個室であること
- 契約書に「事務所利用可」と明記されていること
- 登記および宅建業免許に必要な使用権限を証明できること
賃貸契約書に屋号や商号を明記することも、スムーズな申請につながります。
シェアオフィス・レンタルオフィスは慎重に判断
以下のような物件は原則NG、または個別判断となります。
物件タイプ | 免許取得の可否 |
---|---|
フリーアドレス型 | × |
オープンスペース型 | × |
鍵付きの完全個室型 | 〇(可能) |
バーチャルオフィス | × |
バーチャルオフィス(住所貸し)では宅建業の免許は絶対に下りません。また、ブース型やオープン型のシェアオフィスも、独立性・専有性の要件を満たせず不可とされるケースが大半です。
一方、完全個室型のレンタルオフィスで、住所表記・掲示物設置・専任宅建士常駐が可能であれば、認められる可能性があります。
登記住所と事務所の住所は一致するべき?
法人で宅建業免許を取得する場合、登記上の本店所在地が事務所として機能しているかが審査されます。
また、金融機関や保証協会では「登記と事務所が一致していない」ことに慎重な対応をとることもあるため、開業時はできるだけ一致させておく方がスムーズです。
まとめ:宅建業免許取得には「ちゃんとした事務所」が不可欠
宅建業免許を取得するには、登記住所だけでなく、実態のある営業事務所の確保が必須です。
自宅や賃貸オフィスでも条件を満たせば使用可能ですが、独立性・専有性・常駐体制などの厳格な要件をクリアする必要があります。
これから開業を検討している方は、物件選びの段階から「宅建業免許に通るかどうか」を意識し、事務所として認められるかを慎重に確認することが大切です。
事前に管轄の免許窓口へ相談しておくと、スムーズな申請につながります。