携帯電話だけではダメ?不動産開業で固定電話を設置するメリット・実務上の影響とは

不動産業を開業する際、「固定電話は必要か?」という疑問を持つ方は多いでしょう。現代ではスマートフォン1台で多くの業務がこなせる時代ですが、こと不動産業界においては、まだまだ“固定電話の有無”が事業の信用性や実務運用に影響を与えるケースがあります。
本記事では、固定電話を設置するメリット、携帯電話のみの運用による注意点、そして実際の不動産実務でどう活用されているかを詳しく解説します。
宅建業免許取得には固定電話が必須なのか?
まず確認しておきたいのが「法律上の要件」です。宅地建物取引業免許(宅建業免許)を取得する際、事務所には一定の要件が定められており、その中には「常時連絡可能な電話回線の設置」が含まれます。
この“電話”について明確に「固定電話」とは記載されていないものの、各自治体の審査では、固定電話の設置が事実上求められるケースが多くあります。特に以下のような状況では注意が必要です。
- 携帯電話のみだと「不安定」と見なされる
- 050番号では「事務所性が認められない」可能性がある
- 法人登記時や保証協会加入時にも固定電話の記載が必要になることがある
つまり、免許取得や開業手続きにおいて固定電話は“必須ではないが、推奨される”というのが実情です。
固定電話を設置するメリットとは?
信頼性・安心感を高める
03、06といった市外局番のついた固定電話は、「事務所が実在している」「信頼できる業者である」という印象を与えやすくなります。特に売主・地主・法人取引先との初回接点では、連絡先の第一印象が重要です。
「携帯番号しかない不動産会社は怪しい」「営業専門で事務所を持たない業者かも」といった先入観を避けるためにも、固定電話があること自体が“安心材料”となります。
宅建業免許の審査がスムーズになる
前述の通り、宅建業免許の申請においては「事務所が継続的に業務を行える設備を備えているか」が審査されます。固定電話の設置は、その要件の一部として高く評価される傾向があります。
申請時に「電話回線契約書」や「電話機の写真」を求められる自治体もあり、固定電話を設置しておくことで審査のリスクを軽減できます。
業務の効率化と分業体制に役立つ
固定電話があることで、以下のような実務上の利点があります。
携帯電話だけでは「常に自分が出なければならない」状態になりがちですが、固定電話を軸にした運用はチーム対応や業務分担の構築に適しています。
FAXや複合機との連携がしやすい
不動産業では今なお、FAXによるやりとりが根強く残っています。物件資料や重要事項説明書、契約関係書類の送受信において、FAX付きの複合機を活用する場面は少なくありません。
050番号や携帯電話ではFAX送受信に対応していない場合が多いため、固定電話との組み合わせでFAXをスムーズに利用できるのは実務上の大きなメリットです。

不動産開業時、携帯電話のみで運用する場合の注意点
信頼面で不利になる可能性がある
携帯番号だけの業者は、特に年配層や法人顧客に「ちゃんとした会社なのか?」という不安を抱かれることがあります。ポータルサイトで見かけた業者に電話した際、携帯番号だけだと折り返しが敬遠されるケースもあるため、第一印象で損をしないよう注意が必要です。
対応の属人化・対応漏れのリスク
営業担当の携帯にすべての連絡が集中すると、本人が出られないタイミングに連絡が途切れたり、折り返し忘れが発生したりする可能性があります。また、業務を他のスタッフに引き継ぎにくくなるため、事業の拡大やチーム化が難しくなります。
宅建業免許・保証協会の審査で苦労することも
申請時に「なぜ固定電話を設置していないのか」「どのように業務を行うのか」といった説明を求められることがあり、余計な手間が発生するケースもあります。あらかじめ電話環境を整えておくことで、申請のストレスを軽減できます。
固定電話を導入する際のコストと手段
- 初期設置費用:約5,000円〜10,000円(工事費)
- 月額基本料:約2,000円前後
- 通話料:従量制または定額プランあり
- 複合機との連携を考えるならFAX回線との併設が必要
最近では、IP電話を活用した「03番号のクラウド型固定電話」なども登場しており、工事不要で導入できるタイプもあります。信頼性と利便性を両立する方法として、クラウドPBXも選択肢に入れるとよいでしょう。
まとめ:固定電話は信頼と実務の両面で武器になる
携帯電話だけでも最低限の営業活動は可能ですが、不動産業においては「信用」「安心感」「業務効率化」といった観点から、固定電話の設置が今なお強いメリットを持ちます。
特に事業として拡大していきたい方や、宅建業免許の取得を目指す方にとっては、固定電話の導入はコスト以上の価値をもたらす選択です。
顧客対応・申請対応・ブランディングまで見据えて、適切な通信環境を整えることが、不動産業で長く信頼される事業運営につながるでしょう。