不動産業でFAXを使う場面とは?必要性・代替手段・コストの実態を紹介

デジタル化が進む現代でも、不動産業界ではFAXの利用が根強く残っています。「まだFAXを使ってるの?」と疑問に思う人もいるかもしれませんが、実際の不動産現場の業務フローにおいて、FAXが欠かせない場面が多く存在します。
本記事では、不動産業でFAXが使われる主なシーンや、その理由、近年注目される代替手段、そして導入・運用コストの実態について解説します。
なぜ不動産業界では今もFAXが使われているのか?
不動産業界にFAX文化が残っている理由には、以下のような背景があります。
- 業界全体に「紙文化」が根強い
- 取引先に高齢の地主や不動産オーナーが多い
- 管理会社や仲介業者間でFAXによる物件紹介が慣例化している
- 手書きで送る申込書・案内図などのやり取りに適している
- 送信時に“記録が残る”という安心感
特に中小規模の不動産会社や、管理会社・仲介業者間のネットワークでは、「電話+FAX」の組み合わせが今なお実務の主流であるケースが珍しくありません。
不動産業界でFAXが使われる主な場面
1. 物件紹介(図面送付)
最も典型的なのが、業者間で行われる「物件図面の送付」です。
管理会社が募集物件の図面をFAXで流し、仲介会社が顧客に紹介する形がいまだ多く見られます。
こうした点から、確実かつ即時性のある連絡手段としてFAXが選ばれているのが実情です。
2. 申込書や覚書のやり取り
不動産の申込書や条件変更の覚書など、署名・捺印が必要な書類もFAXで送受信されることが多いです。
こうした場面では、「印刷して記入→送信」という手順が簡単なFAXのほうがスムーズに対応できるため、メールよりも優先されるケースがあります。
3. 管理会社との入居確認・審査連絡
入居申込時の管理会社とのやり取りでは、以下のようなやり取りがFAXで行われることがあります。
特にFAX専用番号が用意されている管理会社やオーナーでは、あえてFAXしか受け付けない方針をとっている場合もあります。
4. オーナー・地主との連絡
高齢のオーナーや地主の中には、メールやチャットに対応していない方も多くいます。そのような場合、FAXが「唯一の電子的連絡手段」として機能することがあります。
FAXであれば紙のまま確認・保管ができるという安心感から、FAXを指定してくるオーナーも少なくありません。
不動産業界のFAXの代替手段とその課題
FAXの不便さやペーパーレス化の観点から、徐々に代替手段を導入する不動産会社も増えてきました。
代替手段の例
- メール添付(PDF・画像)
- クラウドストレージ(Google Drive、Dropbox等)
- 不動産業界専用の業者間物件共有システム
- LINE・チャットツールによる画像送信
- 電子契約サービス(クラウドサインなど)
課題と注意点
- 相手がITに不慣れな場合、受け取れないことがある
- PDFファイルを開けない、印刷できないという問い合わせが発生
- 社内でシステム導入しても、相手先がFAX文化を捨てない限り完全移行は難しい
結果として、FAXとデジタルの併用が現実的な落としどころとなっている企業が多いのが現状です。
FAX導入・運用のコストと選択肢
電話回線+FAX複合機
- 従来の固定電話回線にFAX機器を接続して運用する
- 月額2,000〜3,000円+機器代(3万円前後)
インターネットFAX(クラウドFAX)
- メールアドレスでFAX送受信ができるサービス
- 月額1,000〜3,000円程度、ペーパーレスでスマホ対応可
複合機(コピー・プリンタ兼用)にFAX機能を追加
- オフィス機器を統合してコスト削減可能
- 導入コストは高め(リース契約が一般的)
コストの目安
項目 | 従来型FAX | インターネットFAX |
---|---|---|
初期費用 | 数千円〜数万円 | ほぼ不要 |
月額料金 | 約2,000円〜3,000円 | 約1,000円〜3,000円 |
通信費 | 通話ごとに発生 | 枚数課金・定額制あり |
利便性 | 紙が必要、送受信確認が視覚的 | スマホ・PCで送受信可、外出中でも対応可 |
コストや利便性を考慮しながら、相手の環境に応じた柔軟なFAX運用を検討することが求められます。
まとめ:FAXは“古い”が“現役”の業務ツール
FAXは古い通信手段と思われがちですが、不動産業界では今なお現場の即戦力として使われ続けています。紙文化や高齢のオーナーとのやり取り、業者間の慣習など、FAXが求められる場面は少なくありません。
一方で、すべての業務をFAXに依存するのではなく、クラウドFAXやメール・チャットとの併用によって、現代的な業務効率化とのバランスを取ることが重要です。
不動産業の開業を検討している方は、業務に必要なFAX環境とそのコスト、代替手段の選択肢を踏まえ、自社の業務フローに合った導入方法を見極めていきましょう。


