不動産会社の開業に必要な看板とは?宅建業法上の標識と集客用看板の違いを解説

不動産会社の開業に必要な看板とは?宅建業法上の標識と集客用看板の違いを解説

不動産業を開業する際、「どんな看板を設置すべきか」と悩む方は多いのではないでしょうか。実は、不動産業においては単なる広告目的の看板だけでなく、「宅建業法で設置が義務付けられた標識(法定掲示物)」が存在します。

この記事では、不動産会社の開業時に必要な看板について、宅建業法上で必須とされる標識と、集客を目的とした看板との違い、設置時の注意点やおすすめの形式まで詳しく解説します。

不動産業における「看板」には2種類ある

不動産会社の開業において必要とされる看板は、大きく分けて次の2つです。

  1. 宅建業法で義務付けられている「標識(業者票・報酬額表)」
  2. 集客や認知度アップを目的とした「広告用看板」

この2つは役割も設置義務の有無もまったく異なります。以下でそれぞれの特徴を整理します。

宅建業法上の「標識(法定掲示物)」とは?

開業に必須の「宅地建物取引業者票」

宅建業を営むためには、宅建業免許を取得したうえで、事務所や案内所などに「宅地建物取引業者票(いわゆる標識)」を掲示する義務があります。これは宅建業法第50条に基づくものです。

この標識には、以下の情報を正確に記載する必要があります。

  • 商号・名称
  • 免許証番号(例:東京都知事(1)第○○○○○号)
  • 代表者の氏名
  • 専任宅建士の氏名
  • 所属団体名(宅建協会など)
  • 事務所の所在地

この標識は、事務所の見やすい場所に常時掲示しなければならず、掲示されていないと業務停止などの行政処分を受ける可能性もあります。

「報酬額表」も掲示が必要

もう一つの法定掲示物として、「報酬額表(仲介手数料の上限額を示した表)」も掲示が義務付けられています。これは顧客とのトラブル防止のために必要で、事務所内の見やすい位置に設置しておくことが求められます。

報酬額表には、以下の内容を明記するのが一般的です。

  • 売買・賃貸ごとの報酬限度額
  • 計算例(税抜・税込)
  • 特例などの記載(事業用物件など)

標識の形式と設置方法

標識や報酬額表の形式に厳密な規定はありませんが、一般的にはA3~A2サイズ程度で、金属・アクリル・プラスチック製のプレートが選ばれます。

設置場所の例
  • 事務所の入口(外部から見える窓やドア)
  • 応接室や受付カウンター背面
  • 宅建士証と並べて設置するパターンも可

デザイン性よりも内容がはっきり見えること、常時掲示されていることが最も重要です。

集客用の「広告看板」とは?

一方で、不動産会社が設置する看板の中には、集客や認知向上のために設置される広告用の看板もあります。これは法律で義務付けられているものではありませんが、地域密着の営業を行ううえで非常に効果的なツールです。

集客用看板の種類

広告用看板にはさまざまな形式があります。

  • 壁面看板(建物の外壁に設置)
  • 自立看板(敷地内に独立して設置)
  • スタンド看板(歩道や入り口に置くタイプ)
  • のぼり旗(イベント時などに使用)

これらは「不動産○○」「賃貸・売買のご相談はこちら」など、店舗名や提供サービスを訴求する目的で設置されます。

広告看板の効果

  • 通行人や周辺住民への認知度アップ
  • 店舗の場所をわかりやすくする効果
  • ブランディング(ロゴや配色で印象付け)

特に立地が目立たない場所にある場合、集客看板がないと「どこに不動産屋があるかわからない」という状態になってしまうこともあります。

設置には許可や規制が必要な場合も

広告用看板を屋外に設置する場合、地域によっては景観条例や屋外広告物条例に基づく許可申請が必要になることがあります。無許可で大型看板を設置すると、行政からの是正指導や罰則対象になるケースもあるため、必ず事前に自治体へ確認しましょう。

標識と広告用看板の違いまとめ

比較項目標識(法定掲示物)集客用看板
法的義務あり(宅建業法で義務)なし(任意)
設置場所事務所内・入口付近屋外・壁面・歩道など
内容登録情報・免許番号・宅建士名など商号・キャッチコピー・連絡先など
設置目的行政要件を満たすため認知拡大・集客のため
規制宅建業法に準拠屋外広告物条例などが適用される

不動産開業時の看板設置でよくある失敗例と対策

  • 標識が見えない場所にある
  • 免許情報が古いままになっている
  • 看板サイズが極端に小さい
  • 集客用看板が条例違反

標識が見えない場所にある

受付裏や棚の裏など、外部から見えない位置に標識を置いていると、現地調査で指摘されることがあります。入口付近の目立つ位置にしっかりと設置しましょう。

免許情報が古いままになっている

免許番号や代表者名が変更されたにもかかわらず、標識が更新されていないと違反扱いになります。免許更新時や変更届提出後には、速やかに看板の内容も修正しましょう。

看板サイズが極端に小さい

小さなプレートや紙の貼り付けだけでは、「常時掲示」とみなされないことがあります。事務所の規模に応じた見やすいサイズの掲示を意識しましょう。

集客用看板が条例違反

屋外に大型看板を設置する際、地元自治体の屋外広告物条例に違反していると、撤去命令や罰則を受けるリスクがあります。事前に確認し、必要に応じて申請を行いましょう。

まとめ:法定標識の設置は開業の必須条件、集客看板は信頼構築の武器

不動産業の開業において、宅建業法上の標識は免許取得と営業活動の基盤となるものです。これを正しく設置していなければ、免許が下りなかったり、行政処分の対象になることもあります。

一方で、広告看板は任意ではありますが、地域での存在感を高めるうえで欠かせない営業ツールです。目立たない立地でも、看板一つで集客力は大きく変わります。

それぞれの目的と設置ルールを理解し、法令を守りながら効果的に看板を活用することが、不動産会社の成功の第一歩となります。

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