不動産開業時の事務所要件を満たしているかはどのように確認されるの?

不動産業を開業する際には、宅地建物取引業免許(宅建業免許)の取得が必須です。
その審査で最も重視されるのが「事務所の要件を満たしているかどうか」。
この要件を満たさなければ、どれだけ他の条件が整っていても免許は下りません。
では、行政はどのようにして「事務所要件を満たしているか」を確認するのでしょうか?この記事では、確認方法・審査の流れ・よくあるチェックポイントをわかりやすく解説します。
確認は「書類審査」と「現地調査」の二段階
宅建業免許の申請では、行政庁(都道府県)の担当者が書類と現地確認の両面で審査を行います。
書類で形式的な条件を確認し、必要に応じて事務所に訪問して実態を確認します。
この2段階を通じて、事務所が法律上の要件を満たしているかどうかをチェックしているのです。
書類審査で確認される内容
使用権限の証明書類
まず、提出された賃貸借契約書や登記簿謄本などを通じて、事務所に継続的な使用権限があるかを確認します。
チェックされるポイントは次のとおりです。
バーチャルオフィスや短期契約では、「継続的な事務所」とはみなされません。
間取り図・レイアウト図
提出されたレイアウト図から、事務所としての構造が整っているかを確認します。具体的には以下の点が見られます。
- 独立した部屋になっているか
- 他者との共用スペースではないか
- 応接や執務スペースが配置されているか
特に、壁で仕切られていないオープンスペースや、飲食店内の一角などは、否認される可能性があります。
写真(内観・外観・掲示物)
写真により、実際の使用状況・掲示の有無・備品の配置などを確認します。以下のような構成で提出するのが一般的です。
- 外観(建物と入口がわかる写真)
- 室内(机・椅子・棚などが配置されている様子)
- 宅建業者票や報酬額表の掲示状態
机だけの殺風景な空間では、「実際に業務を行っていないのでは」と判断されることもあるため、家具や備品を含めた実務環境の写真が重要です。
実地調査(現地確認)でのチェック内容
多くの都道府県では、書類審査後に行政職員が事務所に訪問し、実際の状態を確認します。
これは形式的な確認ではなく、「営業実態があるかどうか」の判断をするための重要なプロセスです。
主なチェック項目は以下のとおりです。
申請住所と現場の一致
- 実際にその住所にオフィスが存在するか
- ポストや入口に社名が表示されているか
独立性・専用性の有無
- 鍵付きで、他者と区切られた空間か
- 他業者との混在がないか
- 書類保管や来客対応ができる構造か
業務設備の整備状況
- 机・椅子・電話・収納棚などが整っているか
- パソコンやインターネット回線が使用可能か
- 重要事項説明などの業務が可能な状態か
法定掲示物の確認
- 宅建業者票、報酬額表、宅建士証の写しなどが掲示されているか
- 表示が正しく、見やすい場所に設置されているか
宅建士の勤務実態の確認
- 宅建士が常勤できる勤務体制になっているか
- 他の宅建業者と兼任していないか
特に、宅建士がその場にいない、あるいは週に数時間しか来ないという体制では、「専任」とは認められません。
管理者やオーナーへのヒアリングも行われる場合あり
レンタルオフィスや共有施設を利用している場合、施設の管理者に対してヒアリングが行われることもあります。
- この部屋は他者と共有していないか?
- 申請者が専用で使用しているか?
- 不動産業での利用を把握・承諾しているか?
これに備えて、事前に管理者へ「宅建業免許取得のために使用すること」を伝え、掲示や来客対応の許可を得ておくことが重要です。
宅建業免許の審査で事前に確認すべきポイント
宅建業免許の審査でトラブルを避けるためには、事前の準備が欠かせません。
以下の項目は契約前または申請前に必ず確認しましょう。
- 契約書に「専用使用」「事務所利用」の記載があるか
- 間取り図とレイアウトが要件を満たしているか
- 標識や掲示物を設置できるスペースがあるか
- 管轄の都道府県庁に事前相談を行ったか
不安な場合は、写真や図面を持参して「このオフィスで免許が取得できるか」を行政窓口で事前確認してもらうのが安全です。
まとめ:書類・現地調査の両方で厳しく確認される
不動産開業時の事務所要件は、書類と現地調査の両方で詳細に確認されるという点を忘れてはなりません。
オフィスの形式や安さだけで選んでしまうと、「免許が取れない」「再契約が必要になる」といった事態に陥ることもあります。事務所が免許取得に適しているかどうかは、契約前に必ず確認しましょう。
しっかりと整備されたオフィスは、免許取得だけでなく、顧客からの信頼にもつながります。開業準備の中でも特に重要な部分として、丁寧にチェックしておくことが成功のカギです。



