コワーキングスペースで不動産業は始められる?免許取得の可否と条件まとめ

不動産業での独立を検討する際、「コワーキングスペースで開業できないか?」と考える人も増えています。コストを抑えて立地の良い拠点が持てるというメリットは魅力的ですが、実際には宅建業免許の取得に“事務所の条件”という大きな壁が存在します。
この記事では、コワーキングスペースで不動産業を始めることができるかどうか、宅建業免許取得の可否と満たすべき条件、利用時の注意点などを詳しく解説します。
コワーキングスペースとは?基本の理解
オープンで共有型のワークスペース
コワーキングスペースとは、個人や法人がデスクや会議室を共有する形で利用するオフィス環境のことです。月額契約やドロップイン(一時利用)など柔軟なプランが特徴で、フリーランスやスタートアップ企業によく利用されています。
専用スペースではない点が最大の特徴
一般的にコワーキングスペースは誰でも自由に出入りできる共有スペースであり、個人の専用席や個室ではないことが多く、他の利用者と同じ空間を共用します。
宅建業免許の取得には「事務所要件」がある
不動産業を営むには、都道府県または国土交通省から**宅地建物取引業免許(宅建業免許)**を取得する必要があります。その取得にあたって、事務所の実体があるかどうかが厳しく審査されるのです。
宅建業法および各都道府県の要綱に基づく「事務所要件」は以下の通りです。
独立性のあるスペースであること
- 他の事業者や利用者と空間を明確に区切られていること(壁・鍵付き扉など)
- 来客対応や契約書類の取り扱いが支障なくできる環境であること
継続的かつ使用権限のある契約であること
- 利用期間が短期・一時的でないこと(最低6ヶ月程度が目安)
- 専用スペースとして占有利用ができる契約であること
標識や報酬額表の掲示ができること
- 宅建業者票や報酬額表など、法定表示物を事務所内外に掲示できる環境であること
専任の宅建士が常勤できること
- その場所で専任宅建士が常勤し、業務を行えることが前提となります
結論:一般的なコワーキングスペースでは宅建業免許は取得できない
共有スペースでは「独立性」が認められない
多くのコワーキングスペースはフリーアドレス制で、利用者が自由に席を選んで作業します。これでは明確な区切りや専有性がなく、宅建業免許の要件を満たさないと判断されます。
たとえば、以下のような環境はNGとされることが多いです。
- オープンなデスクスペースのみの契約
- 会議室やブースを時間制で借りる形態
- 登記や郵便受けだけのバーチャルプラン
一部例外として「個室型コワーキング」なら可能性あり
最近では、コワーキングスペースの中でも「鍵付きの個室」や「専用区画」を月額で提供するプランが登場しています。こうした区画は実質的にレンタルオフィスに近く、宅建業免許の取得実績もある施設が存在します。
ただし、以下の条件を満たす必要があります。
実際に免許を取得できるかどうかの判断方法
事前に管轄の都道府県に相談を
宅建業免許の判断は、各都道府県の建築指導課や宅建業担当部局が行います。施設の構造や契約内容によって判断が分かれるため、事前に相談・内見写真の提出・レイアウト図の確認を受けることが重要です。
「ほかの不動産会社がここで免許を取得した」と聞いても、同じように通るとは限りません。過信せず、必ず自社のケースについて確認しましょう。
契約前にチェックすべきポイント
- 契約書に「占有・専用利用」と記載があるか
- 鍵付き・壁付きの独立空間であるか
- 管理者が標識や業者票の掲示を認めているか
- 宅建業での利用実績がある施設か
コワーキングスペース利用時の注意点
名刺・Webサイトの住所表記に注意
コワーキングスペースの住所をそのまま法人登記や名刺に使用する場合、「バーチャルオフィス」と誤解されることもあるため、可能であれば部屋番号や区画名を明記し、実体があることを伝えられるよう工夫しましょう。
内覧時は写真をしっかり撮影
宅建業免許の申請では、事務所の外観・内観・レイアウト図の提出が求められます。契約前に施設を見学する際は、写真撮影と書類確認を忘れずに行いましょう。
管理者との関係性が重要
現地調査の際には、行政の担当者が施設の管理者にヒアリングすることもあります。「この人は宅建業の開業を目的として使っています」と協力してもらえる関係性を築いておくことが大切です。
まとめ:一般的なコワーキングでは不可。個室型なら可能性あり
コワーキングスペースを使って不動産業を始めることは、基本的には宅建業免許の要件を満たさないため難しいのが現実です。
ただし、下記のようなケースでは取得できる可能性があります。
最終的には管轄行政の判断となるため、契約前に必ず相談し、免許取得の可否を確認しましょう。条件を満たした施設を選べば、コワーキングスペースでも開業可能なケースは存在します。
不動産開業にかかるコストを抑えつつ、信頼性あるスタートを切るために、施設選びと事前準備を入念に行うことが成功のカギとなります。




