不動産会社の開業はマンションの1室でもいい?宅建業免許と事務所要件の確認ポイント

「できるだけ初期費用を抑えたい」「まだ1人での開業だから小さなスペースで十分」
そんな理由から、「マンションの一室で不動産会社を開業できないか?」と考える人は少なくありません。
実際、ワンルームや賃貸マンションを拠点に個人で開業しているケースも見られますが、そこには宅建業免許の取得要件という大きなハードルがあります。
この記事では、不動産会社をマンションの一室で開業する際に押さえるべき法的条件や実務上の注意点について、わかりやすく解説します。
結論:マンションの1室でも開業は「可能だが条件付き」
宅建業免許を取得して不動産会社を開業する場合、「事務所の使用実態」と「事務所としての設備要件」を満たせば、マンションの一室でも認められる可能性があります。
ただし、マンションでの開業には次の3つの条件をクリアする必要があります。
条件①:宅建業法に基づく「事務所要件」を満たすこと
不動産業を行うには、宅建業免許の取得が不可欠です。
免許申請の際には、物理的な「事務所」が存在することが大前提となっており、下記の要件が課されます。
主な要件
特に重要なのは、生活空間と業務空間の明確な分離です。
たとえば、ベッドやキッチンが見える状態で応接業務を行っていたり、居室の一角に机を置いただけでは「事務所」として認められない可能性が高くなります。
条件②:マンションの使用目的が「事業可」になっていること
マンションの1室で開業する場合、その物件が事務所利用可能な物件かどうかを確認する必要があります。
チェックすべきポイント
仮に宅建業免許を取得できたとしても、管理規約違反が発覚すれば強制退去になる恐れもあります。
申請時には「使用権限に関する書類(賃貸契約書や使用承諾書)」を提出する必要があるため、最初から事業利用可能な物件を選ぶことが重要です。
条件③:看板(標識)設置が可能であること
宅建業では、免許取得後に「事務所に標識(業者票)を掲示すること」が義務付けられています。
また、実際の運用でも外部から「宅建業者であることが明示できること」が求められます。
問題になりやすいケース
これらの事情から、マンションでの開業は標識の掲示に苦労することが多いです。
最悪の場合、宅建業法違反となるリスクもあるため、事前に必ず確認を行いましょう。
不動産会社で独立!自宅開業とマンション開業の違い
項目 | 自宅開業(一戸建て) | マンションの1室 |
---|---|---|
使用目的の制限 | 原則なし | 賃貸契約・規約の制限あり |
看板の設置 | 比較的自由 | 外部設置に制限が多い |
生活空間の分離要件 | 部屋数次第で対応可 | ワンルームでは厳しい可能性あり |
管理組合の影響 | なし | 管理規約に左右される |
マンションの1室を使う場合は、物件選びと内部構成が免許取得の可否を左右します。
マンションの1室で不動産開業している実例と工夫
実際にマンションの1室で開業している不動産会社では、以下のような工夫をして宅建業免許を取得しています。
- 2DKの1室を完全に「事務所専用」に改装(キッチンやベッドを撤去)
- ガラス製のパーテーションで生活空間と業務空間を分離
- 管理会社から「事務所利用の承諾書」を取得して申請に添付
- 窓に取り外し可能な内側看板を設置して、外から視認できるよう工夫
条件を満たせば、低コストで開業できる現実的な選択肢になりえます。
どうしてもマンションでの開業が難しい場合の代替案
マンションでの開業が難しい場合は、以下の代替手段を検討しましょう。
1. 「SOHO可」の賃貸物件を探す
オフィスと住居の両方の利用が許可されている物件なら、宅建業の要件にも対応できるケースが多いです。
2. レンタルオフィスやシェアオフィスの活用
一部には宅建業免許取得対応のレンタルオフィスも存在します。事務所設置に柔軟性がありますが、「専用区画・独立性・常時使用可能性」が求められることに注意。
3. いったん別の場所で免許取得→将来的に移転
最初は免許が確実に下りる事務所でスタートし、軌道に乗った後で移転届を出す方法もあります。
まとめ|マンションでも可能だが、事前準備と調査が必須
不動産会社の開業において、マンションの1室を使うことは「宅建業法上は可能だが、慎重な条件整備が必要」です。
- 賃貸契約や管理規約で事業利用が認められているか
- 生活空間と業務空間が完全に分離されているか
- 固定電話や事務机、帳簿棚などが揃っているか
- 標識(業者票)を設置できるスペースがあるか
- 管理会社やオーナーから使用承諾が得られているか
すべてをクリアできれば、マンションの1室でも開業は十分に現実的です。
一方で、少しでも不安がある場合は、不動産に強い行政書士や専門家に相談しながら進めるのが安全です。
無理に突き進まず、最初の一歩でつまずかないよう慎重に進めることが成功のカギとなります。