創業計画書の書き方|不動産業で融資を受けるための具体例付き解説

創業計画書の書き方|不動産業で融資を受けるための具体例付き解説

不動産会社の開業を目指す際、日本政策金融公庫などから融資を受けるために不可欠なのが「創業計画書」の作成です。この計画書は、金融機関にとってあなたの事業の将来性・信頼性を判断する最重要資料であり、融資審査を左右する“成否のカギ”とも言えます。

この記事では、不動産業での開業に特化した創業計画書の書き方を、具体例を交えながらわかりやすく解説します。初めて書く方でも安心して取り組めるよう、実際のフォーマットに沿って解説していきます。

創業計画書とは?

創業計画書とは、あなたがどんな事業を立ち上げようとしているのかを、数字とストーリーの両面で説明するための資料です。金融機関にとっては、「返済できる見込みがあるかどうか」を判断するための材料となります。

日本政策金融公庫では、以下の項目が記載されたフォーマットを基本としています。

不動産業における創業計画書の記入項目とポイント

以下は、日本政策金融公庫の公式フォーマットに基づく記載例です。不動産業で融資を受けたい方は、各項目に次のような視点で記入すると効果的です。

1. 創業の動機(記述式)

ポイント:業界経験や将来ビジョンを盛り込む

記入例

約10年間、不動産仲介会社にて売買・賃貸・投資物件の営業を担当してまいりました。お客様から直接「あなたに任せたい」と言われることも多く、より自由な提案ができる環境で価値を提供したいと考え、独立を決意しました。地域に根ざした営業スタイルと、資産形成を支援する提案型仲介で、信頼される不動産会社を目指します。

2. 経営者の略歴(記述式)

ポイント:不動産業での経験年数、実績をアピール

記入例

2014年〜2024年:株式会社〇〇不動産勤務
・賃貸仲介月間契約数トップ3を6回獲得
・年間売上3000万円超(売買・投資案件含む)
・宅地建物取引士資格取得済(2016年)

※実務経験や資格は、金融機関にとって「返済能力の裏付け」となります。

3. 取扱商品・サービス

ポイント:取り扱う物件・ターゲット顧客を具体的に記載

記入例

・地域密着型の賃貸仲介(ワンルーム〜ファミリー向け)
・中古戸建・区分マンションの売買仲介
・投資家向け収益物件の紹介
・空室改善・リフォーム提案サービス

※売買と賃貸の比率も記載できると理想的です(例:賃貸7割、売買3割など)

4. 取引先・販売先・仕入先

ポイント:ポータルサイトや地元業者との連携予定を記載

記入例
  • 不動産ポータルサイト(SUUMO、HOME'Sなど)への物件掲載
  • 地元の不動産会社と物件情報連携
  • オーナー・管理会社からの直接仕入れ
  • 紹介・口コミ・SNSによる集客

※仕入・集客の流れをしっかり説明できれば信頼性が高まります。

5. 取引先との契約内容

ポイント:実際の契約がまだでも、予定ベースで問題なし

記入例
  • ポータルサイト掲載契約予定(月額3万円)
  • エリア内管理会社2社と情報連携の打診済み
  • 地元工務店と簡易リフォーム対応の協力体制を構築中

6. 従業員数・雇用計画

ポイント:専任宅建士をどう確保するかを明記する

記入例

創業時は代表者1名(宅地建物取引士)にて運営予定。将来的に反響増加に伴い、事務スタッフ1名を採用予定(2年目目標)。

※宅建士を雇う場合は「専任性」「常勤性」の説明も必要です。

7. 事務所所在地・設備

ポイント:宅建業法の要件に沿った事務所条件を記載

記入例

所在地:東京都〇〇区〇〇1-2-3 コーポ〇〇101
形態:賃貸(事務所使用可)・専有面積18㎡・完全独立スペース
備品:事務机、書類棚、パソコン、固定電話、接客スペース設置済

※賃貸契約書の写し、事務所写真の提出が必要になる場合もあります。

8. 必要な資金と使いみち

ポイント:何にどれだけ使うのかを明確にする

項目金額(円)備考
事務所保証金・礼金等600,000賃料10万円×6ヶ月
備品・設備費300,000PC、複合機、デスク等
ポータル掲載初期費用200,000初期契約料
広告宣伝費300,000チラシ制作・名刺・HP運用など
保証協会加入費1,000,000分担金60万円+年会費等
開業時運転資金600,0003ヶ月分の運転資金
合計3,000,000

9. 資金調達方法

ポイント:融資額と自己資金の割合を記載

記入例
  • 自己資金:50万円(貯蓄)
  • 日本政策金融公庫からの借入希望額:250万円

※一般的には自己資金1〜2割以上が望ましいが、ゼロでも通るケースもあり。

10. 売上・利益計画(向こう2年分)

ポイント:実現可能性のある数字にする。根拠も示す。

記入例
年度売上高営業利益備考
1年目6,000,000円1,000,000円月5件成約×手数料10万円平均
2年目10,000,000円2,000,000円営業人員1名増員予定

※「どうやってこの売上を達成するのか」の説明が添えられると説得力アップ。

よくあるNGポイントと対処法

  • 数字に根拠がない → 過去の実績や業界平均をもとに説明
  • 売上だけが大きく利益が少ない → コスト構造を見直す
  • すべてポータル頼みの集客計画 → SNS・紹介・口コミも組み込む
  • 宅建士がいない →自分が取得済みか、雇用計画を明記

まとめ:創業計画書は「熱意」と「数字」のバランスがカギ

創業計画書は単なる申請書類ではなく、あなたの事業に対する熱意と準備力を示す“プレゼン資料”です。

不動産業は資金の流れが複雑で、信頼が求められるビジネスだからこそ、しっかりした計画書を作ることで金融機関の信頼を得ることができます。

まずは、現実的な数字と明確な戦略をもとに、自分の言葉で計画書を仕上げてみましょう。準備を整えた分だけ、融資成功の確率は大きく高まります。

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