不動産会社に顧問弁護士は必要?開業時に備えるべき法務リスクと契約タイミング

不動産会社に顧問弁護士は必要?開業時に備えるべき法務リスクと契約タイミング
Legal advisor or lawyer is signing a contract agreement after consultation.

不動産会社を開業するにあたって、宅建業免許や事務所要件、営業準備など多くのステップが求められます。

その中で「顧問弁護士の契約は必要なのか?」と悩む方も多いのではないでしょうか。法務リスクは事業運営に大きな影響を与える可能性があるため、事前の対策が重要です。

ここでは、不動産会社が直面しやすい法務リスクと、顧問弁護士を契約すべきタイミングについて詳しく解説します。

顧問弁護士とは?契約する意味と役割

顧問弁護士とは、特定の企業と継続的な契約を結び、法務相談やトラブル対応を支援する弁護士のことです。

月額制の契約が一般的で、業務内容には契約書のリーガルチェック、トラブルの予防策、訴訟時の初動対応などが含まれます。

不動産業は法律と密接に関わる業種であり、宅建業法、借地借家法、民法、消費者契約法など、多岐にわたる法律知識が求められます。顧問弁護士がいることで、日常業務での判断ミスを減らし、事前のリスク管理が可能になります。

不動産会社が直面しやすい法務リスクとは?

不動産業務には、多くの法的トラブルのリスクが潜んでいます。

以下のようなシーンで、法務対応の重要性が浮き彫りになります。

契約書トラブル

売買契約や賃貸契約の内容に不備があった場合、解約や損害賠償のリスクが生じます。特に特約条項の書き方ひとつで、大きな損失につながることもあり得ます。

クレームやトラブル対応

入居者・オーナーとのトラブル対応は日常的に発生します。対応を誤ると信頼の失墜だけでなく、訴訟に発展する可能性もあります。

サブリース契約や家賃保証関連

サブリース契約などでは過去に大きな集団訴訟も発生しており、契約内容や説明責任の不備が企業に損害を与えるリスクがあります。

下請け業者との契約

リフォーム業者やハウスクリーニング業者などとの業務委託契約においても、責任の範囲が曖昧だとトラブルの原因になります。

不動産開業初期に顧問弁護士がいないリスク

不動産会社を立ち上げる際、多くの方が営業準備や集客施策に注力する一方で、法務体制の整備を後回しにしがちです。

しかし、以下のようなリスクが潜んでいます。

  • 自作の契約書をそのまま使用し、法的効力やトラブル対応に不備が出る
  • クレーム対応に追われて本業が手につかなくなる
  • 万一の訴訟で弁護士を探すのに時間がかかり、初動が遅れる
  • SNS炎上や口コミサイトでの悪評が法的措置できずに拡散する

特に開業直後は社内に法務の専門家がいないケースが多いため、日々の意思決定に法的な裏付けがなくなり、無意識のうちにリスクを積み重ねてしまいます。

不動産開業:顧問弁護士を契約するベストなタイミングとは?

顧問弁護士との契約は、次のタイミングで検討するのが理想です。

開業準備段階(会社設立〜宅建業免許申請前後)

この時期は、会社定款の作成や出資比率の調整、不動産業免許に関する申請書類の作成など、法的手続きが多く発生します。設立後のトラブルを防ぐという意味でも、この段階で契約しておくとスムーズです。

初回契約書を使う前

不動産売買契約書や媒介契約書を自社で作成・改訂する場合、初版で顧問弁護士のチェックを受けておくことで、その後の運用の軸を作れます。1度チェックしてもらえば、類似契約にはテンプレートとして展開可能です。

クレーム対応で困った経験があるとき

まだ契約していない状態で大きなクレームが発生した場合、スポット対応で弁護士に相談すると高額になることがあります。これを機に顧問契約を見直す企業も少なくありません。

不動産開業:顧問契約の費用相場と内容

顧問弁護士の費用相場は月額2万円〜5万円前後が一般的です。提供される業務範囲は以下の通りです。

  • 電話やメールでの法務相談(○時間まで無料)
  • 契約書のチェック・作成
  • 交渉や紛争時の初期対応
  • 取引先とのトラブル対応の助言
  • 社員研修(コンプライアンスなど)

また、実際に訴訟に発展した場合の代理人費用は別途発生しますが、顧問契約をしていると割引が適用されるケースもあります。

小規模な不動産会社にも顧問弁護士は必要か?

「1人で開業した小さな不動産会社でも顧問弁護士は必要か?」という疑問は多くの方が抱くところです。

結論としては、外注先や顧客との契約頻度が少なく、リスクの少ない取引が中心であれば、顧問弁護士は必須ではありません。しかし、1件でも大きな損害が発生する可能性があるのが不動産業の特徴です。

月額2〜3万円のコストで、安心して契約書を交わし、法的判断ができる環境が手に入るのであれば、コストパフォーマンスとしては決して悪くありません。

スポット相談と顧問契約の違い

スポットでの弁護士相談は1時間あたり1〜2万円程度かかり、対応スピードや事業理解の面でも継続契約に劣ります。一方、顧問弁護士は事業内容を深く理解してくれるため、予防的な観点からの助言が可能です。

荒川 竜介

「いざ」というときに相談先があることで、心理的にも大きな安心感を得られます。

まとめ:開業期から法務リスクを意識して備える

不動産業は契約トラブル、クレーム、説明責任など、他業種と比べて法務リスクが非常に高い業種です。だからこそ、開業初期から顧問弁護士と連携し、トラブルの芽を摘む体制づくりが重要です。

特に以下のような方には、顧問弁護士の契約をおすすめします。

  • 契約書を自作・再利用している
  • クレームや訴訟対応の経験がない
  • 法律に詳しいスタッフがいない
  • 開業後すぐに複数の取引を控えている

法務体制を整えることは、単なるリスク回避だけでなく、不動産会社としての信用力を高めることにもつながります。開業後の安定経営を実現するためにも、ぜひ顧問弁護士の導入を検討してみてください。

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